認知症高齢者のグループホーム、スプリンクラー設置義務付けへ 日本経済新聞 2013/6/27
総務省消防庁は27日までに、認知症高齢者が暮らすグループホームの火災被害を防ぐため、原則として全施設にスプリンクラー設置を義務付ける方針を固めた。同庁の有識者部会が同日、設置を義務付けるよう求める対策の骨子をまとめた。自動的に消防へ通報できるシステムも望ましいとした。
養護老人ホームなど介護が必要な高齢者向け施設にも適用する方向で、消防庁は関係法令の改正を含め、対策の具体化を急ぐ。
現状では延べ床面積275平方メートル以上の施設に設置義務がある。2月の火災で5人が死亡した長崎市のグループホームは未設置で、設置義務もなかった。
有識者部会は再発防止のため、小規模施設にも設置を促す必要があると判断した。
骨子は、スプリンクラーの面積基準を廃止し、確実に避難できる一部施設を除き、設に設置を義務化すべきだとした。
ハード面では、少人数で避難誘導や初期消火などをこなさなければならない施設の従業員の負担を減らすため、自動火災報知設備に連動した自動通報システムも挙げた。ただ誤作動による混乱の恐れもあり、義務化には課題の整理が必要とした。
消防施設や建物構造の不備を早期に改善させるため、自治体の関係部局が連携して重点的に指導することも盛り込んだ。ソフト面では、採用時などの従業員教育の必要性や、消防訓練の効果を高める工夫が重要としている。
スプリンクラーの設置は施設の規模に関係なく、国の金でつくった都道府県の基金から補助金が出る。施設側には補助の拡充を求める声があり、総務省は自治体を通じた特別交付税による支援が必要かどうか検討している。
厚生労働省によると、認知症グループホームは全国に約1万2千カ所で、17万人余りが利用している。
厚労省が長崎市の火災後に行った調査では、275平方メートル未満でスプリンクラーが未設置だったのは全国の522カ所で、うち46.9%は今後も設置を予定していないと回答していた。未設置の理由を複数回答で尋ねたところ「消防法令上の義務がないため」が89.5%、「費用負担の問題」が67.6%だった。